「よーろっぱ日記」から「ヨーロッパだより」へ
インターローカルノートと題して日々の制作の変遷を載せていたが、横浜トリエンナーレ2005のディレクターズダイアリーとしてかたちを変え、会期終了まで引き続き身辺記事を載せていた。しかしその後、忙しさのあまり継続していなかった。
今回フィルムアート社のウェッブ上で連載されていた「よーろっぱ日記」を引き続き私のウェッブで紹介することにし、その引き続きを「ヨーロッパだより」というタイトルで、ここに載せることにした。

 updated 2012.05.27

2008.11.(001)〜(100)
2010.09.(101)〜(200)
2011.10.(201)〜(300)
2013.04.(301)〜(400)
2014.11.(401)〜(500)

2007.04.09-2008.03.10 フィルムアート社川俣正「よーろっぱ日記」
2003.01.29-2005.12.31 川俣正「インターローカルノート」


EL560
2018.10.13
On the Air

今、オーストラリアのシドニーに向けて飛んでいる機内で書いている。東京で4- 5時間のストップオーバーをして、そこからシドニーに向かう。羽田の空港で少しゆっくりしょうと思う。シドニーの町からのコミッションワークだ。3年くらい前にコンペがあり、それを勝ち取ったのだが、それからなかなか動かず今年に入って再三打ち合わせをしてやっと現場作業をしてすることになった。

EL559
2018.08.27
Lisbon

ポルトガルのリスボンに来てる。ここの新しい美術館でインスタレーションをするためだ。美術館のロケーションは、大きな川のそばにあり、その川が海に繋がっている。美術館の展示場は、川の水面と同じレベルになるようなので、はじめは展示場に直接この川の水を引入れようかと思ったが、現実的に無理な気がして、どうしょうかと考えていたところにリスボンの海岸一帯を定期的に掃除するボランティア集団のインフォメーションをもらい、毎回数トンにものぼるプラスティクの漂流物を集めているとのこと。この漂流物でインスタレーションが出来ないかを考えた。

EL558
2018.08.20
Moscow

ロシアのモスクワで作業をした。今年の初めに突然パリのギャラリーから紹介されて、モスクワのプーシキン美術館でインターベンション(介入?)の展示を頼まれた。そして何度となくプランを提出したのだが、なかなかOKがもらえず、いいかげんうんざりしていたが、とにかく日程もオープニングも決められて、半ば強制的に現場で作業しざるを得なくなった。
結論から言うと、もう2度とロシア、モスクワで仕事をする事は無いということ。この国、ここの人たちと一緒に仕事をしたいとは思わない。ここまで明確に思う自分に驚いているのだが、「ここの(限定して言えば、プーシキン美術館にいて自分の作業に関わった)人たちが、全く信じられないということ」これに尽きる。ここでこれから何が起ころうと、どんなすごい招待状をもらっても、もうやらないだろう。こんなにきっぱりといえる国、町、美術館は、世界中でここだけだ。嫌なことがあったとかじゃなく、彼等を信じて作業しても常に裏切られる。いいかげん作業を放り投げて、途中でパリに戻ろうかと何度も考えた。
ただ、自分なりの社会的な立場や、おとな(?)の振る舞い方で最後は押し通した。感情的になるのも大人気ない。しかしこのような人に対しての裏切りには、憤りを超えて彼等のためにここで時間と能力を使っている自分に情けなくなった。
結論は、自分にもうそれほど多くの時間があるわけではないので、誰になんと言われようと、気持ち良く一緒に作業をしてくれる連中と作品をつくりたい。そのことを改めて確認した。そして思う事は、生まれた環境や言語、文化、生活スタイルも違う人たちとひとつのことを一緒に行うことが、いかに大変なことか。

EL557
2018.08.16
金沢

金沢の町や人、今回お世話になっている金沢21世紀美術館。そこで働いている人たち、いろんな人たちと新たに出会っている。毎回、プロジェクトのたびに多くの人に会う。いろんな人たちと仕事をし、それで生活している。アートで100パーセント生活しているという事なのだろう。もうかれこれ40年もやってきた。今ではこのようなグループ展で呼ばれて仕事をすると、自分が最年長になる事が多い。ここでも韓国 や中国、そして日本の作家の中で自分が一番年寄りだ。別に何も意味はないのだが、長年続けていると、なんだか浦島太郎のような気分になる。、まあそれはそれで良いのだろう。今やっている事で、自分なりに納得するものが作れればいいし、そのための場をもらっているのだから。

EL556
2018.08.11
金沢

毎日、ホテルから美術館近くの現場の空きビルに通う。色々なプロジェクトを今年の夏は行なってきたので、少々疲れ気味だ。この暑さにもダレかかっているが、空きビルの2階だけクーラーが利いているので助かる。作業は、ボランティアといつもの作業スタッフなので、気兼ねなく作業を進められる。美術館に頼んでおいた材料を屋上に設置したクレーンで運び入れる。5階建てなのでそのアレンジもたいへんだ。どこに何を組み立てるか、その都度材料を見ながら考える。

EL555
2018.08.08
金沢

金沢へ向かう。ここで今年の日本での最後のプロジェクトを行う。すでに作業スタッフは現場に入り、材料となる廃材を手際よく運び込んでいた。ボランティアスタッフも到着し、ここで約10日間の合宿作業をする。宿泊所にみんな集まり、主催者側が手製の食事で我々を招いてくれた。さてとどうなるか。

EL554
2018.08.07
東京

インテリアデザイナーの杉本貴志氏が亡くなった。
つい数年前に中国での作業をまかされ、何度か事務所を訪れ、プランの打ち合わせを行なった。じつは数十年前に一度、杉本さんといっしょにインテリアのデザインをしたこともあり、数十年ぶりに再開し、また仕事をオーダーされた事を嬉しく思い、何度も中国の現場に行き、数カ月かけて現場で6つの作品を制作した。突然の知らせで、お別れの会が開かれる東京の会場へと向かった。
会が終わり、外に出て東京の夜空を眺めタバコを吸いながら、日本のインテリアデザイン界の一つの時代が終わったのだと思った。

EL553
2018.07.28
仙台

北海道の次は、仙台でのプロジェクトが待っている。ここも毎年この時期に滞在し、制作を行う。
今年は、この地域にある運河に浮かべる船を作るのが目的だ。ポリエステルボードとFRP樹脂で軽くして、
8人乗りの船を作る。樹脂のにおいが強いので、みんなマスクをして汗にまみれながら制作した。
日中の暑さで樹脂がなかなか乾かなかっため、夜中に作業をしたり、ポリエステルが樹脂で溶けてしまったりしたが、そんなアクシデントも乗り越えて、最終日にみんなで船の進水式を行う事ができた。やれやれだ。仙台の街が七夕の観光客でいっぱいになる頃、新幹線で東京に戻る。

EL552
2018.07.21
室蘭

暑いパリを離れて、蒸し暑い日本に到着する。この夏の蒸し暑さは、どうにも馴染まない。数日後、北海道に移動する。ここで毎年行われているプロジェクト「北海道インプログレス」を行うためだ。既に5、6年前から毎年来道して行なってるので、メンバーもいつもの連中で、和気藹々に行う。今年は、室蘭工業大学でレクチャーをし、ここの学生をプロジェクトに勧誘してくる。
昼は作業で夜は、飲み会。そんな数日を涼しい北海道ですごす。

EL551
2018.07.17
Paris

南フランスで3つの作業が終わり、パリの自宅に戻る。3週間ぶりの自宅は、子供達がすでに日本に帰国していることもあり、のんびりひとりで数日を過ごす。しかし、やりかけのマケットを仕上げたり、洗濯やら帰国の準備やらで相変わらず夜中までアトリエで動きまわっている。久し振りに自宅で一人でいるので、食事も寝るのも気にしないでいると、気がついたらアトリエのソファーで目が覚める日が多くなった。明日は日本に帰国する日だ。

EL550
2018.07.12
Anglet

天気も良く作業がはかどる。あいかわらずセキュリティの事で、構造をいろいろチエックされる。何処でも一緒だ。この塔に人が登る数倍の荷重をつねにオーダーしてくる。材料のサイズを変え、追加注文し、新たに付け加える。それだけで数日ムダになる。そんな事をしながら昼は現場でバーベキューをし、重機に乗って海からの潮風を受けながら暗くなるまで組み立て作業を続ける。

EL549
2018.07.09
Anglet

南フランスでの2つの展示のオープニングを終え、もうひとつの作業となるアングレットビエンナーレに出品する塔( Love Tower )の設置に向かう。このビエンナーレのテーマは Loveだ 。17世紀、現場近くの洞窟で、若いカップルが津波で亡くなったことから、ここが有名になり、愛の部屋という名前で、みんなに親しまれているところからこのテーマが出てきたらしい。塔を設置する所がちょうどこの洞窟の真上になることからこの塔をLove Towerと命名した。スパイラルの階段で5メートルほど登ってテラスがあり、そこからの眺めが素晴らしい。遠くスペインの国境となる街も見える。ここでこれから毎日作業が始まる。

EL548
2018.06.30
Anglet

数日後マケットの展示を終え、次のインスタレーションの現場に向かう。
ボルドーから車で2時間ほどの所にあるお城の中でのインスタレーションだ。このお城は、トールーズロートレックのお母さんが所有していた城で、彼はここで亡くなっている。そんなこともあり、ロートレックの美術館にしょうと近年中国人の資産家が買取り、リノベーションして新たなギャラリーを設置して、定期的にいろんな作家を呼び、展示が行なわれていた。ワインフィールドを持ち、独自のワインをつくっている。いろいろなイベントもして、レストランもあり、近隣から多くの人が来ていた。ここでロートレックにちなんだインスタレーションを割りばしを使って行った。奥行が30メートルもあるギャラリーで、そこには割り箸を吊し、仮の雲状の薄い天井をつくる。デリケートな仕事で、設営にけっこう手間取る。

EL547
2018.06.29
Anglet

南フランスでの3つの展覧会開催のため、パリを立つ。既に材料や展示作品などは、数週間前に倉庫から運ばれている。ビアリッツ(Biariz) の空港から直接今回の最初の展示となるアングレット、アートセンター(Villa Beatrix, Anglet ) に向かう。ここでマケットの展示を行うためだ。今回は、この町で行うアングレットビエンナーレに参加することもあり、そのプランとそれに関連するマケットを展示する事が目的だ。パリから送った作品はすでに展示場に運ばれていて、それを細かく3つの部屋にアレンジしていく。作業スタッフも作業に慣れていて、スムーズに設置することができた。最初の展示がうまくいったので少し気持ちが楽になった。

EL546
2018.06.13
Busan

釜山での作業が終わった。予定より早目に終わった。やはりいつも一緒に作業している日本のメンバーだからこそスムーズに行ったのだろう。毎日の作業のあと、夕食を全員で取るが、いいかげん毎日焼き肉とアルコールで、胃が疲れている感じだ。

EL545
2018.06.08
Busan

美術館での作業は、天候にも恵まれ、順調に進んでいる。夕食は、美術館の人に案内されていろんなレストランに毎日行った。夕食をたらふく食べて、ホテルに戻り、そのままベッドにダウン。

EL544
2017.09.02
Paris

ソウルで乗り換えして釜山の空港についたら、日本のスタッフが迎えに来ていた。
今回はいつもの日本の作業メンバーで行うことを美術館に伝えた。最初は、予算の問題で難色を示していたが、日程の都合と作業中の通訳の問題などいろいろあるので、僕の提案で押しきった。4名の日本人スタッフは、韓国が初めてで、みんなウキウキした感じだった。まずはホテルにチェックインして、夕食を食べる事にした。これから毎日焼き肉だ。

EL543
2018.06.04
Paris

今日から1週間のスケジュールで韓国、釜山に行く。釜山の私立美術館でインスタレーションを行うためだ。数ヶ月前に連絡があり、以前の美術館館長との関係や、釜山のギャラリーとのかかわりから、今回この美術館で作品設置する事を決めた。夕方のパリ発ソウル行きの飛行機に乗る。

EL542
2018.05.23
Paris

パリのレストランでのインスタレーションがはじまる。前日、倉庫で作品材料をアレンジして、車に積み込んだ。朝から数名のボランティアスタッフと作業に取りかかかる。とりあえずは恒久設置との事で、強度を考えながら慎重に取り付けていく。日本製の割りばしを約8万本を使ったインスタレーションは、室内から廊下に増殖し続け、レストラン入り口付近まで広がっていった。

EL541
2017.11.20
Paris

新しいマックでこれを書いている。 以前のマックエアーが突然動かなくなり、「ヨーロッパだより」の続きを書くことができなかった。 どうしたものかと思ってそのままにしていたら、数ヶ月が過ぎてしまった。既に2年ほど使っていたということと、 中のデータを外に出したくないということで、このまま封印してしまおうと思った。 バックアップは、デスクトップのパソコンからする事として、マックショップに行き最新のパソコンを見てみた。 以前のマックエアよりもっと小さいマックブックがでていた。いろいろ修理に出してる時間が掛かるより、買ってきた。 さてとこれからバックアップだ。どのくらい時間がかかるか分からないが、とにかく旅行に持って行けるものを持とう。

EL540
2017.09.02
Paris

パリに帰ってくる。長い夏休みだった。子供達は、年に一度の日本を満喫したに違いない。荷物を整理するのに数日かかる。それから気分を変えて、パリ生活に必要な生活用品を近くのスーパーに買いに行く。子供の学校も来週から始まる。いくつかプロジェクトのプランを至急送らなければならない。夏休みボケなどしていられない。

EL539
2017.08.23
羽田

今年の夏の日本でのすべてのスケジュールを終え、羽田から明日飛行機で帰る。帰国というのか、戻るというのか、パリに自宅があるのだから、帰るということになるのだろう。荷物を羽田のホテルの部屋で詰め込む。子供のも入れてずいぶんなスーツケースの数だ。これらを全部飛行機に詰め込んで、自宅まで持って帰る。

EL538
2017.08.21
金沢

来年行われるプロジェクトのための現地訪問と打ち合わせを、金沢の21世紀美術館で行う。ここの美術館に来るのは初めてだ。ただ単に今まで来る機会がなかっただけなのだが、建築も美術館も、面白いコンセプトではある。午前中に候補地の一つである公園を訪ねて、いろいろプランを考える。金沢城、兼六園、その間を何度も歩いて考える。

EL537
2017.08.16 代官山

以前、荒川区に建てた「汐入タワー」の解体が始まった時期だったので、その廃材をそのまま代官山のこのプロジェクトに使おうということが、急遽決まった。解体のセレモニー的なワークショップが終わり、解体が始まり、どんどん廃材が代官山のこのビルの屋上に運ばれてきた。それを使いながら、少しずつ組み立てる。解体から構築へ、ある場所からある場所へ、過去から現在へ作業がシフトして行く快感を一人で感じていた。

EL536
2017.08.12 代官山

「工事中・再開」の制作が始まる。今回はヒルサイドテラスの屋上を使って、インスタレーションをする。屋根の上(ルーフトップ)でのプランは、80年代からあった。最初はPS1の屋上で、その後パリの屋根の上で行うプランを作ったが、いずれも実現しなかった。そんなこともあり、ぜひ、この時期に、ここで行いたかった。このプランには、申し分のないロケーションと建物(低層集合商業ビル)だと思った。まずはスケッチお送り、なんとか了解を取る。あとは材料だ。

EL535
2017.08.10
仙台

仙台の美術大学でワークショップを行う。仙台でのワークショップの一環で、美術学生にも、ワークショップに参加してもらおうと企画した。芸大の時の同級生が教授としてこの大学で働いていて、彼のアレンジで2日間の授業をすることになった。もちろんフランスの学生も交流会には参加してくれた。

EL534
2017.08.04
仙台

仙台でのワークショップが始まる。ここでのプロジェクトも今年から実際に現地に滞在して始まった。仙台市内の海岸地区、6年前の津波によって、地域が崩壊し、残った住民で、なんとか新たな地域作りを模索している地区。そこにアートプロジェクトを持ち込むという企画だ。フランスから僕の元学生数名を連れてきて、彼らと地元住民との交流を今回のワークショップのメインテーマにした。全く地元も津波も知らない外部の人。言葉もできない彼らに、果たして地元の人たちが心を開いてくれるのかどうか。それが今年の活動の要になっている。このプロジェクトも数年かけて継続的に行うことになる。

EL533
2017.07.22
岩見沢

岩見沢でのプロジェクトが始まる。数年前から北海道で継続するプロジェクトを、友人たちで立ち上げたグループで行っている。それも昨年、一段落して、次のプロジェクトに向かうことになり、岩見沢で候補地が見つかり、ここで2番目となるプロジェクトを行うことにした。今年はこの場所での最初の年になる。みんなで最初の1本の木材を現場に立て、記念写真を撮る。ここがこれからどのような場になっていくのか、みんな半信半疑だ。もちろん自分でもこの先、続いて行くのかさえもわからない。そんなプロジェクトを一つぐらい持っているのもいいかなと思っているのは確かだ。

EL532
2017.07.16
鹿嶋

鹿島の倉庫に行き、そこから古いマケットを持ってくる。先回来た時は、大きな模型などを探していたが、今回は昔の小品を見つけるためだ。倉庫にどのくらいの数のマケットが残っているのかも知らないで、今年の夏に東京のギャラリーでマケット展(初期のマケット)をすることを決めてしまった。オープニングまで後数週間しかない。倉庫の屋根裏を調べたら、いくつか懐かしいマケットが数点でてきた。

EL531
2017.07.10
熊本

熊本の新しい家の棟上げ式を行う。やっとここまでたどり着いたかという感じ。実際の建築施行が始まるまで長かった。なかなか大工や施工業者が決まらず、ずいぶんと待たざるを得なかったが、春に作業が始まり、ここまで出来上がってきた。あとは内装の細かい作業の連続で、あまり変化がないような作業が始まる。ただ全体のスケールが見えてきたし、完成の時期も予想できるようになった。よっぽど雨が降らなければ、9月下旬には完成するだろう。それが知れただけでも、今回夏に熊本に来た甲斐がある。

EL530
2017.07.03
大分

大分でレクチャーをする。大分の美術短大と地元の建築家組合の2つのレクチャーだった。大分市内に来るのは初めてだ。数年前に国東半島で作品を制作したが、国東から大分市内まで車で2〜3時間かかる。そんなことで先回は、来ることがなかった。駅前は、ホテルから飲食店などが並び、結構都会の駅前のようだ。駅前のホテルに荷物を置き、友人がここの市立美術館の館長をやっているので、挨拶代わりに訪れてみた。久しぶりに会い、いろいろと昔話をする。

EL529
2017.06.28
東京

夏休みが始まった。今年は1週間早く日本に帰国することにした。熊本の実家の様子が気になるので、早々にパリを切上げ、帰路についた。新築の家は、まだ基礎のコンクリートが敷かれたところだった。まだ時間がかかりそうだが、確かに進み始めていた。思えばここまで持ってくるのに、ずいぶん時間がかかった。熊本の大工や施行業者の状況が、まず見えなかったことが多分にあった。最初にコンタクトを取った業者は8ヶ月待ちで、コストは自分が考えていた値段の倍を付けてきた。確かに評判の良い施工業者だが、これには驚いた。それからいくつもの業者に連絡を取り、知り合いの建築家に助けを求めた。2ヶ月後になんとか値段とスケジュールがこちらと合う業者を見つけて連絡を取り、打ち合わせまでこぎつけた。そこからネット、スカイプミーティングをして、正規の図面を起こしてもらい、やっと動き出した。

EL528
2017.06.04
信濃大町

朝早く起きて、朝の音楽会の準備に現場に出向く。すでに音楽家達は来ていて、リハーサルを行っている。まだ肌寒いが、気持ちのよい朝だ。だんだんと音がいろんなところから聞こえてくる。ギターの音色、チェロの深い音色、どれもこの場所にマッチしている。ぼんやり彼らの音を聞いているうちに、知らずに観客が増えていた。音楽も少しずつ本番になってきた。時々、向こうのグランドで草野球をやっている人たちのかけ声も混じる。田んぼのあぜ道を走る車の音、鳥の鳴き声、いろんな音がそのまま音楽家のインスピレーションを得て、即興的に音楽になっていく。やはり音楽は、野外のこのような場に限る。どんなコンサートホールでもここの環境(木々の中にまぎれて、朝つゆにぬれたテラスに座り、木に体を寄せてぼんやり音を奏でているその音を聞く)に勝るものはないと思った。素直に感動した。

EL527
2017.06.03 信濃大町

2ヶ月ぶりに信濃大町に行く。北アルプス国際芸術祭のオープニングのためだ。1日前に着き、いつものスタッフと顔を会わせる。彼らも少し前に来て、現場の手入れをしてくれていた。早速現場を見に行く。新緑の葉が一面に開いていて、すでに以前のイメージと全く違う現場になっていた。2ヶ月の時間に木々は、葉を付け、テラスの上はすでに空が半分しか見えないくらいに葉が生い茂っている。そこに夕日が差し込み、木々の葉から木漏れ日がテラスに落ちている。何ともきれいな情景だ。自分たちで作ったところだが思わず感動してしまう。こんなふうになるなんて2ヶ月前の雪の日の作業の時は、考えられなかった。隣の工事現場もずいぶんと進んでいる。しかしこの木漏れ日を再現したいために、ここにテラスを作るのだと言っていたのが、そのまま実現した感じだ。しばし、ぼーっと一人でテラスを歩き回る。

EL526
2017.05.28
Orebro

スウェーデンで制作中、ボザールの昔の学生から突然連絡があった。作業を終えてホテルでシャワーを浴び、ぼやっとベッドに寝転んでいる時だった。僕らの友人がどうも自殺したらしい。僕の直接の生徒ではなかったが、いくつか僕のワークショップにも参加し、個人的にもよく連絡を取り合っていた彼がどうして?ということしか言葉が出てこない。どうも仕事の悩みや、彼女との関係が良くなかったなどいろいろなことがあったらしい。数ヶ月前メールをもらい、忙しくて合う時間がないことを告げ、次回に会おうと送ったばかりだった。何も言葉が見つからない。タバコに火をつけ、大きく一息を吸う。煙がぼんやり部屋の上に上って行くのをただ見ていた。

EL525
2017.05.10 Orebro

スウェーデンの町、オレブロという町に来ている。ここで屋外の作品を制作する。2年に1度、町の中に多くの作品が設置される。すでになじみ深いアーティストとスウェーデンの地元の作家が多く参加している。どんなことが出来るかとりあえず考える。

EL524
2017.05.05
Napoli

イタリア、ナポリに来ている。ここにあるチャペルを改造した場所でインスタレーションをする準備だ。昨年末に依頼が来て、現場を下見し、プランを出し、その後、いろいろとやり取りをして今日、2度目の現場打ち合わせだ。今回はおもにテクニカルな打ち合わせとパブリックリレーションが目的だ。実はまだ外の制作に対して、市から許可が下りていないとのこと。どうなるかだ。ナポリは、多くの歴史建造物があり、パブリックな場所で、私のような歴史建造物に直接関わるのは、あまりないとのことで、許可申請も微妙な感じになってきている。最悪、内部だけのインスタレーションになるかもしれないという。どうなることやら。

EL523
2017.04.28
Samedan

サンモリッツに近い小さな村に到着し、ホテルに向かう。そこにチエックインして部屋でくつろいでいると連絡があり、今回の依頼主が現れた。農夫のような体型だが、恥ずかしそうに挨拶をしてきた。現場はこのホテルの隣の白い5階建ての建物だった。外観はすでにリノベーションしてきれいになっていたが、内部は多くの業者がまだ忙しく働いていた。そこの中を抜けながら、いろいろ説明してくれる。僕の制作する場所は、階段周りとその踊り場周辺に作品を作ってほしいということだった。かなり明確に場所が指定され、いろいろ聞きながら、何が出来るかを頭の中でグルグル考えた。

EL522
2017.04.22
Samedan

朝5時に起き、そのまま着替えて空港に向かう。まだ暗いが道路は混んでいなく、タクシーは30分ほどで空港に到着した。チエックインしてラウンジが使えるとのことで、ここで朝食をとる。ひともまばらで、飛行に乗る前だが以外にゆったりとした時間が過ごせた。1時間位でスイスのチューリッヒの空港に着き、そこから電車で4時間ほどかけて山奥に行く。ただこのルートは、ユネスコの世界遺産のルートだと知って、何か得したような気になった。確かに絶壁の合間を電車が通り、いつもスイスのポストカードにでてくる石で出来たアーチ状の橋を渡り、ゆったり電車が山を上って行く。山にはまだ雪が残っている。車窓から外の景色を眺めていると、山の上にも村があり、そのまた上にも村がある。村には必ず教会が中心に建っていて、こんなところにも人が住んでいるのだと、改めて驚く。

EL521
2017.04.21
Paris

ロンドンのギャラリーから、個人コレクターがスイスの山奥に家を購入して、そこに私の作品を組み立てて欲しいというオーダーが来ていると伝えてきた。どうもマケットとかの単品ではなさそうだ。実際に現場を見なければならないようだ。スイスの山奥まで行くことを考えると、手軽にマケットでも購入してもらった方が良いと伝えたが、ぜひ来てくれという。仕方がないので1泊2日でイタリアの国境に近いスイスの山奥を目指して旅のアレンジをすることにした。

EL520
2017.04.03
信濃大町

信濃大町の宿舎に学生が集まる。今回は僕らのスタッフも入れて20名前後で、約10日間の作業を行う予定だ。現場初日の朝、雪が降り始める。この時期には珍しいらしい。これからどうなることやら。まずは、ミーティングテーブル、ベンチをみんなで組み立てる。プロジェクトの最初に行ういつものルーティン作業なので、スタッフは黙々とビスを打っていく。その後、京都の大学生一行が現場に到着し、みんなで昼飯の弁当を食べながらこれからの作業スケジュールを説明する。しかしあまりにも寒いので、近くのホテルの温泉に向かう。そして宿舎に戻り、部屋と食事の分担を決め、明日からの作業に向けて今日はゆっくり寝ることにする。

EL519
2017.03.30
東京

東京のホテルに迎えにきてもらい、東京を朝早く出る。そしてそのまま鹿島の倉庫に向かう。今回、4月後半からオープンする妻有関連の倉庫美術館でマケットを展示するため、大型模型を倉庫から取り出すためだ。鹿島の倉庫にまだ何があるのかよく覚えていないが、とにかく行ってみて、いろいろな木箱を開けて見るしかない。昼前に鹿島の倉庫に到着。久しぶりに倉庫のシャッターを開けると、以前オヤジがここで作業していたままの作業台やテーブル、ソファーなどがあり、懐かしくあの時を思い出した。ずいぶん来ていなかった。倉庫内は雑然と物が積まれていて、木箱に張ってある表示の紙を確認しながら、作品を探して行く。なんとかいくつか未発表の模型が見つかる。それらをトラックに積み込み、昼過ぎに鹿嶋を出る。その後、信濃大町での作業のため、長野へ向かう。すでに周りは暗く、道もナビに頼るしかない。

EL518
2017.02.20
Paris

パリのコレクターから注文された改装中の家のベッドルームに作品を設置する作業が始まる。すでに2年越しの話で、いくつかプランも変わったが、部屋全体を木で覆うインスタレーションになった。場所が家から地下鉄で3つ目のところで、近くて楽だ。ここにこれから何日か通いながら制作する。細かい作業が続く。突然オーナーがふらりと来て、いろいろ注文して行く。それを受けながらとにかく黙々と作業をする。彼らのベットルームであり、これから毎日僕の作品の中で寝るわけだから、お粗末には作れない。

EL517
2017.02.18
Chamonix

今日はスキーをすることにする。アパートのレンタルスキーの店で、サイズに合うスキーを選んでもらい、子供用のスキーゲレンデのあるところまで電車で行く。なんだかんだ子供達は、スキーをしたというところまでで、今年は終わり。来年からちゃんと習うことにする。子供達をおいて一人でリフトに乗り、ゲレンデの上の方から滑ってくる。昔取った杵柄。難なく滑り降りてくる。スキーを滑るまでの装備やらの面倒さを考えなかったら、まあ楽しいものなのだろう。気分転換には、良かった。

EL516
2017.02.15
Chamonix

朝から雪が降っている。子供達は部屋のテラスですでに雪と遊んでいる。こんなに大雪を見るのも体験するのも初めてだろう。まずは腹ごしらえをして、外に出るが、スキーよりは雪に慣れることから始めることにする。道は滑るし、まっすぐにも歩けない。100メートルも行くと、休憩だ。カフェは、何処も人でいっぱい。みんなが同じ時期にスキーをするためにここに来る。この時期にスキーをする習慣はヨーロッパでは、最近らしい。雪国に生まれて、そこで毎冬雪と戦って育ったものには、雪の遊び場なんて、何も興味もないし、改めて雪と戯れるという気持ちは全くない。子供時代、嫌というほど雪にまみれていたので、スキーに熱中する人の気が知れない。子供達が雪山の崖に上って、そこから転げ落ちてくるのを何度も楽しんでいる。

EL515
2017.02.10
Chamonix

昼から大きな荷物を持って、ジュネーブへ向けて飛び立つ。そこから乗り合いバスで一時間かけて山を登り、目的地に着いたのは、夜だったが、なんとか目的地のアパートに入り、荷物を置いていろいろ整理をした。部屋の窓を開けて薄暗い外の雪山を見て、本当にスキーをするために来たのだと、みんなで確認した。夜空にうっすら生える雪山には、リフトの影も見える。スキー場はここから歩いても行けるだろう。子供達が疲れて寝静まった時間に、テラスに出て煙草を吸う。冷たい空気と一緒に吸う煙草は、格別だ。これから少し仕事から離れてゆっくりすることを考える。

EL514
2017.02.08
Paris

子供達のヴァカンスが始まった。2週間をどう過ごすか考えていたら、友人がシャモニーにアパートを持っていて、1週間ぐらいだったら貸してくれるということで、急遽スキーヴァカンスになった。この2月の学校のヴァカンスは、スキーヴァカンスとも言われていて、なぜだかみんなスキーをこの時期、子供達はする。どうもヨーロッパの国において、スキー、水泳は、子供の必須運動のような感じで、スキーに行ったか、滑れるのかという話が子供達の話題に出てくるという。そういう意味で今までスキーなんぞフランスでするとは考えてなかったが、親の見栄も半分ありで、とにかく子供達も奥さんも今までしたことがないということで、スキー用品を買いに行き、それなりに準備した。自分は、覚えているだけで中学の時以来のスキーだ。どうなるか。

EL513
2017.01.20
Paris

パリは、これからどんどん寒くなる。日も短い。朝起きるとまだ暗く、子供達を学校に出す頃に、やっと日が出てくる。彼らが登校したあと、そそくさと家の彼らが食べ散らかしたテーブルを片付け、洗濯物を洗濯機に入れ、部屋の布団を直し、それから掃除機をかける。それが終わって、身支度をしてジムに向かう。そこでひと泳ぎしてサウナに入り、汗をかく。頭がボーッとしてくるところでジムを出て、近くのカフェに行く。座ったら何も言わずにカフェオレとクロワッサンが出てくる。こんなとき、「ああ。ここはパリなのだ」という感じがする。

EL512
2017.01.05
Paris

夜中の10時。子供達は、寝静まっている。子供達の入った後の生温いお風呂に、お湯を足して入り、バスローブを巻いて上がってきたところで寝酒のウイスキーを飲み始める。さて、ここから数時間は自由な時間だ。何をしょうか?溜まっている新聞に目を通そうか。最近は、まとめて新聞が来るので、あるときにいっぱいになる。何もしないでぼーっとしているこの時間が好きだ。世界は、そしてアートは、いろんなことが起きている。そんなことよりこの時間をどのように使うかを考える方が楽しい。空気清浄機の音だけがアトリエに響く。寝る前のこの数時間、何もしないでぼーっとしている。作りかけのマケットも3点あるし、まだ制作途中の作品も。あるいはいくつかメールの返事を書かなければいけないし、今決めなければならないこともいろいろある。しかしすべて打ち捨てて、この時間は何もしないでいようと思う。ちょっと前にFacebookで見たピアニストのグレン・グールドは、凄かった。彼の練習風景が凄い!まだ余韻が残っている。世の中には凄い人がいっぱいいる。もちろん彼はすでに亡くなっているのだが、、。

EL 511
2016.12.30 Paris

久しぶりにジムに行く。今回は、子供達のクリスマス休暇を何処も出かけずパリで過ごすことにした。いろいろプランしたが、どうも腰が重かった。そんなことでダラダラしたクリスマスを過ごし、気分を変えるために久しぶりにジムに行く。同じようなことを考えている人が多く、結構人がいた。朝早く行くと、通常は閑散としているのが、今日はなんだか人の出入りが多い。みんな体が鈍っているのだろう。そしていつものカフェで休憩。外の席に座ると、中から注文しないうちにカフェオレとクロワッサンを持ってきてくれる。常連の仲間入りのような感じだ。さてさて今年も終わりだ。タバコを吸いながら家に帰って、昨日のマケットの途中を仕上げるか。

EL 510
2016.12.20
Paris

毎年1年が早く過ぎる。今年はどんな年だったのか?1月、2月にメッツでの展示があり、前半はそれがメインの展覧会だった。夏前にベルギーの複数のコレクターからの依頼があり、ツリーハットの制作のため何度もブリュッセルへ行く。滞在型のオーダーメイド作品制作だ。現地に行き、数日間そこに滞在して、制作する。この制作スタイルも定着してきた。今まで、このような制作スタイルで、いくつ作ってきたのだろう?ただ今回は、コレクターの繋がりで次の現場、そしてもう一つの現場と短い時間にいくつも制作した。日程も調整出来ず、とにかく制作期間中は、雨でも決行した。そしてアメリカ、アトランタでも制作した。夏は日本で忙しく各地を転々とし、奈良の作品を仕上げた。まだいろいろ今後のプロジェクトが続いているが、いくつか長期で行うプロジェクトが決まってきた。これを年に2つか3つ持っていれば、それだけでこれからの作品制作が続いて行く。それがどういうことなのか、まだ自分でもわからない。以前行っていたコールマインプロジェクトが、毎年複数回行われるということだ。どうだろう?果たして出来るのだろうか?

EL 509
2016.12.16
Ghent

今年最後の現場仕事となるベルギー・ゲントでのツリーハット制作で早朝から電車で移動する。もう12月中旬だが先週よりは寒くない。この時期の天気を確認して今日になった。昼前に現場到着。早々に作業開始。アシスタントのギョームがすでに待機していた。今年はここを入れて4箇所のツリーハットを制作した。すべて個人コレクターの依頼で、自宅敷地内の大きな庭にある木々にクレーンを使って取り付ける。すでにルーティン化された作業だ。アシスタントの彼と黙々と作業をこなす。

EL 508
2016.12.09
Paris

あと1週間で子供達は冬休みに入る。6週間勉強して2週間休みという学校のスケジュールにも慣れてきた。子供の送迎だけでも大変だ。毎朝、学校に遅れないように奥さんが連れて行くのを見送る。そして夕方、今度は学校にピックアップに出向く。そんな6週間が過ぎ、やっと解放される。時間ができたので、アトリエにこもっていろいろ考えていることを作品化する。

EL 507
2016.12.07
Paris

毎朝、一人だけ早く起きて朝食を作り、子供たちを学校に送り、家を片付け、洗濯物を洗濯機に入れ、ベッドを直して部屋を掃除し、やっと自分の時間になる。そして近くのプールのあるジムで、ひと泳ぎ。その後サウナに入り、出てきて行きつけのカフェで、カフェオレとクロワッサンを食べる。他に仕事の打ち合わせなどが無いときは、週に3日はジムに行く。ただその後、アトリエでぼーっと体を休める時間が長くなった。体力は以前に比べて、やはり落ちている。徹夜の後の日は、一日ボーッとして仕事にならない。以前は全然問題なかったが、これも歳によるものなのか。自覚したくはないが、確実に体に現れている。

EL 506
2016.12.04
Paris

昔の学生にメールで連絡をとっていたら、以前のボザールのカワマタアトリエの学生達がみんな集まってパーティをしようということになり、急遽、昔の学生のアパートで行うことになった。要するに同窓会のようなものだ。2007年の第1期生から今年の学生まで20名ほどが集まった。すでに子供を抱えてきた学生もいた。まだ1期生が卒業して4年ほどしか経っていないが、みんなそれぞれ職業を持ち、立派になっているのに驚いた。引き続きアーティストとして制作発表を行っている者、デザイナーとして自分のブランドを立ち上げ、商売を行っている者、カフェのインテリアデザインを手がけた者、レストランのシェフなどなど。みんなたくましく成長している。

EL 505
2016.11.30
Paris

アトリエで終日マケット制作。来年早々にロンドンの画廊が新しいマケットを取りに来る。来年3月に行われる香港のアートフェアに出品するとのこと。倉庫に大きなトラックが来て、そのまま持って行く。新作はいくつかあるが、まだ足りない。もう少し作らなければならない。しかし、アトリエに積んである日本の書籍が目に入る。年末用に大量に買い込んだが、これらを読む時間がない。何かをする時は、必ず他の何かをしたいけど出来ないもどかしさの中で、作業をすることになる。

EL 504
2016.11.26
Paris

キューバのカストロが死んだ。ちょうどボザールの今度の新しい学生達と次のアトリエ・ヴォヤージュ(アトリエ旅行)をキューバに決めた時だった。アメリカとの対立が少し緩和される状況になった今の新しいキューバの状況を見てみたいということで決めたが、どうもその象徴的なことがキューバで起こったようだ

EL 503
2016.11.09
Paris

憂鬱になった。今日アメリカ大統領選で、ドナルド・トランプが勝利した。フランスから極右勢力のマリー・ルペンが祝福のメッセージを入れたという。今回のアメリカ大統領選の政見放送は両方が罵倒しあうだけで、全くのインテリジェンスを感じないものだった。こんなのはじめてだ。これから世界はどんどん閉鎖的になり、排除の論理と純粋性へのロマンチックな渇望でしか、人は判断しなくなる。
どうなって行くのだろう。世界からマイノリティの居場所がなくなる。

EL 502
2016.11.05
Paris

北海道での新プロジェクトの模型を制作する。夏から言われ続けて、やっと制作にかかる。なかなかプランが決まらなかったことと、素材をどうするかが悩ましかった。しかし、今年奈良のプロジェクトで使用した800本の丸太材を岩見沢に運んだ時点で決まった。それから大急ぎで模型制作の準備をして、その日の夜に完成した。まあどうなるか。スケールだけは大きい。

EL 501
2016.11.02
Paris

寒い冬がパリに訪れた。先日まで半袖のシャツだったのが、今日は、革ジャンを羽織っている人たちを多く見かける。1年は早いものだとつくづく思う今日この頃。11月に卒業制作の試験を行う学生が、そわそわし始めた。プランを何度か見たが、まだ制作が決まっていないようだ。これからが勝負所だろう。学生を信じるしかない。


<<EL401-500


*無断掲載禁止*


home_japanese


copyright tadashi kawamata plus on the table, tokyo